ResponsetoClimateChange

取り組みの背景

気候変動の進行にともない、脱炭素社会への移行に向けて努力することが2016年に発効されたパリ協定で掲げられ、長期目標として平均気温の上昇を2℃より下方に抑えることが世界の共通認識となりました。2021年には、気候に関する最新の科学的知見をまとめたIPCC第6次評価報告書が発行され、またCOP26では産業革命以前と比べた地球の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えることを目標としたグラスゴー気候合意が採択されました。
このような背景からミルボンでは、気候変動を中長期にわたり経営戦略や財務計画に影響を与える現実的なリスクと捉え、サステナビリティコミットメントにおいて最重要課題の1つとして位置づけました。ミルボングループのScope1・2排出量のカーボンニュートラル目標は2050年達成をめざしています。この目標を達成するため脱炭素推進を迅速に判断できる組織構築およびステークホルダーの皆さまとの協働が必要だと考えています。すべてのステークホルダーの皆さまに気候変動関連情報を開示し、対話を進めることで情報の透明性を確保するとともに、気候変動に対する取り組みおよび開示の更なるレベルアップを図り、より一層、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。

TCFD
TCFDコンソーシアム

ミルボンは2022年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、2023年1月には国内賛同企業などによる組織「TCFDコンソーシアム」へ加盟しました。TCFD提言に基づいた情報開示を継続して行い、積極的に気候変動対応へ取り組んでいきます。

ガバナンス・リスクマネジメント

ミルボンでは、サステナビリティに関連する課題を重要な経営課題の1つとして捉え、その解決に向けた推進体制を整えています。具体的には、常務取締役が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」を毎月1回開催しています。サステナビリティ推進委員会では、気候変動に関する対応方針や取り組みに向けた課題等を検討・協議し、その内容は必要に応じて、経営会議および取締役会へ付議または報告され、取締役会はこのプロセスを定期的に監督し、対応の指示および戦略への反映を行っています。
組織のカーボンニュートラル目標の実現に向け、具体的な対策検討、グループ内への展開、取り組みの進捗管理・モニタリングを担う「TCFDワーキンググループ(以下WGと記載) 」を、サステナビリティ推進委員会の下に設置。取り組みの進捗状況は、サステナビリティ推進委員会に報告しています。
組織の気候変動に関するリスクはTCFD WGが特定しています。同WGは活動状況を半期に1回サステナビリティ推進委員会を通じて経営会議および取締役会へ報告し、取締役会の監督を受けています。

2022年度におけるサステナビリティ推進委員会およびTCFD WGの審議実績
:倫理方針の策定、人権方針の策定、環境方針の策定、サステナビリティコミットメント5つの最重要課題における進捗管理、シナリオ分析の実施および結果報告、ミルボングループカーボンニュートラル達成目標年度策定 等

体制図

体制図

戦略

TCFD開示の初年度である今回は、ミルボングループの中核である(株)ミルボン単体を対象範囲としてシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では1.5℃および4℃の気温上昇を想定し、2025年時点(短期)・2030年時点(中期)・2050年時点(長期)の3つの時期に関して気候変動によるリスクと機会を検討しました。分析にはIEA・IPCCが示したシナリオを使用しており、1.5℃シナリオでは脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による影響を、4℃シナリオでは急性の変化(大雨や洪水の発生等)、慢性的な変化(平均気温の上昇や年間降水量の変化等)の双方による物理的影響を分析しています。

1986年~2005年を基準とした世界の年平均地上気温の変化

1986年~2005年を基準とした世界の年平均地上気温の変化 1986年~2005年を基準とした世界の年平均地上気温の変化

シナリオ分析結果について

今回のシナリオ分析で約40のリスクと機会が存在することが明らかになったため、これらのリスクと機会に対して(株)ミルボンへの影響の大きさを評価し、対応策を検討しました。シナリオ分析結果から、(株)ミルボンは1.5℃と4℃の双方のシナリオにおいて原料調達コスト増による影響を大きく受ける可能性があり、さらに1.5℃シナリオでは自社操業コスト増による影響も大きくなる可能性があることが分かりました。また、これらのリスクと機会については、ミルボンのサステナビリティコミットメントにて設定した「再生・循環型の生産・消費活動」、「人に優しい調達活動」の推進が、リスクの低減と機会の獲得に資するということも分かりました。その他の取り組みについても、対応策を推進してまいります。

1.5℃シナリオ

原料調達

リスク機会の内容 リスク/機会 時間軸 影響度 原料調達において想定する対策等
サプライヤーへのカーボンプライシングの導入・拡大による調達コスト増 リスク 2030年

植物由来原料

  • 国際情勢リスク、気候変動リスクにおいて、調達ルートやトレーサビリティを調査。
  • 原料確保のため、効率的な調達購買手法の検討。
  • カーボンプライシングによるサプライヤーへのコスト増を概算、商品価格への上乗せ検討、代替原料の検討。
  • RSPO認証パーム油の積極採用。2030年までに認証パーム油、マスバランス品を100%採用目標。

容器包装原料

  • 石油由来バージンプラスチックを2030年までに30%削減する目標に向け、新製品容器への植物由来プラや樹脂量削減の成型方法を積極採用。
  • プラスチック容器のリサイクル処理方法の研究。
  • カーボンプライシングによる容器包装原料のコスト増を概算、商品価格への上乗せ検討、代替原料の検討。
森林保護への法規制による、土地利用への制限にともなう調達コスト増 リスク 2025年
原料のトレーサビリティに関する法規制強化による調達コスト増 リスク 2030年

自社操業

リスク機会の内容 リスク/機会 時間軸 影響度 自社操業において想定する対策等
自社へのカーボンプライシングの導入・拡大による操業コスト増 リスク 2030年

自社のエネルギー使用

  • WEO2021,2022のNZEシナリオにおける炭素価格を用いて、Scope1・2にかかるカーボンプライシングコストを試算。
  • 電力コスト上昇の見通しから、自家消費発電の割合を拡大。

法規制対応

  • 各種規制の把握、コスト増の影響度によっては、他原料への切り替えや製品への転嫁も想定。
  • EUを中心とした法規制への対応コストと社内体制の確立。
電力小売価格の上昇によるエネルギーコスト増 リスク 2030年
各国拠点での法規制強化によるコンプライアンスコスト増 リスク 2030年
サーキュラーエコノミーへの対応コスト増 リスク 2030年
他社がカーボンプライシングの影響を受け、自社の競争力が向上することによる売上増 機会 2030年
自家発電導入による排出量とエネルギーコスト減 機会 2030年

商品需要

リスク機会の内容 リスク/機会 時間軸 影響度 商品需要において想定する対策等
環境配慮商品の売上増 機会 2030年

商品開発

  • 生活者ニーズに対応した、商品機能向上と環境負荷低減する商品開発

自社内で定量評価を実施し、影響度を決定しています。
カーボンプライシング等で発生する明確なコストについては現在算定中です。

4℃シナリオ

原料調達

リスク機会の内容 リスク/機会 時間軸 影響度 原料調達において想定する対策等
気候変動によるパーム油等植物由来原材料の調達コスト増 リスク 2050年

調達

  • 代替パーム油の研究や処方対応を検討。
  • 気候変動によるパーム油調達価格変動を概算。
  • 原料や調達ルート確保の研究。
  • 原料毎の気候変動による影響度を確認。
  • 主要天然原料の原産国における気候変動調査や保護活動。
安定した原料調達のための取り組みによる調達コスト減 機会 2030年

自社操業

リスク機会の内容 リスク/機会 時間軸 影響度 自社操業において想定する対策等
損傷した生産設備の修復にかかるコスト増 リスク 2050年

災害対応

  • 被災によって生産設備が損傷した場合でも、保険の適用内で修復が可能であることを確認。
  • 災害時は一部物流倉庫への影響が懸念される為、代替輸送を予め想定。
洪水や台風被害による配送への影響による、売上減や在庫毀損によるコスト増 リスク 2050年

自社内で定量評価を実施し、影響度を決定しています。
カーボンプライシング等で発生する明確なコストについては現在算定中です。

指標・目標

シナリオ分析の結果、最も影響度が大きいと考えられる原材料調達コストの増加に対しては、石油由来プラスチック容器包装の削減目標やRSPO認証パーム油の調達目標の達成を通じて引き続きリスク低減を図ります。また、カーボンプライシング導入や電力価格高騰等による操業コストの増加リスクに対しては、2030年のCO₂排出量削減目標に加え、2050年のミルボングループのカーボンニュートラル目標を新たに設定しました。ミルボングループにおけるScope1・2排出について、まずは国内事業所の中で最もCO₂排出量が多い当社生産拠点である「ゆめが丘工場」の2030年カーボンニュートラルをめざします。さらに2050年までにミルボングループのカーボンニュートラルを達成します。今後も定期的にカーボンニュートラルの達成へ向けた取り組み状況をモニタリングし、対応策を講じることでリスクの低減に努めます。

石油由来バージンプラスチック削減目標(2020年比・売上高当たり使用量)

2026 2030
石油由来バージンプラスチック使用量15%削減 石油由来バージンプラスチック使用量30%削減

RSPO認証パーム油採用率(MB+B&C)

2026 2030
RSPO認証パーム油採用率50%(MB+B&C) RSPO認証パーム油採用率100%(MB+B&C)

CO₂削減目標(Scope1・2)

ゆめが丘工場 ミルボングループ
2026年:75%削減(2019年比) 2050年:カーボンニュートラル
2030年:カーボンニュートラル

排出量実績(単位:t-CO₂)

  2019 2020 2021 2022 2023
(株)ミルボン Scope1

1,248

1,205

1,282

1,280

1,420

(株)ミルボン Scope2(マーケット基準)

3,151

2,707

2,559

1,422

972

(株)ミルボン Scope3

194,173

217,492

269,611

ゆめが丘工場 Scope1

502

471

474

500

461

ゆめが丘工場 Scope2(マーケット基準)

1,931

1,768

1,783

504

0

具体的な取り組み

ミルボンゆめが丘工場
ミルボンゆめが丘工場

当社生産拠点である「ゆめが丘工場」では、2022年4月より使用する全電力についてCO2フリー電力を採用しています。また、太陽光発電のほか、社用車の一部をEV・ハイブリット車に切り替えており、2026年度の75%削減へ向け大きく前進をしています。

中部電力ミライズ社が提供するCO2フリー電気「Greenでんき」

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